(続)海の音

雑念のメモ

春の中トロ祭り

春だからと託けて腐敗しない色鮮やかな塩化ビニールの造花が路上に咲き乱れ、それを本物の花だと思った人達がブルーシートを敷き毎晩宴会をしている。日に日に人は増え続けて。明け方3時26分抗菌服とマスクを着用した誰かが作ったことを証明するシールが貼られた焼きそばや唐揚げを食らっている。いつかテレビで観た職人のように嘘を丁寧に削ぎ落とした真実が知りたい。真実とは。腐って朽ちてしまう前に本物の花を発見しないと一生造花に囲まれて暮らすことになる。有限会社の未来。無制限通信の遮断。何が正しいのかもう分からない。請求書と一緒にポストにねじ込まれた新装開店の宝石屋のチラシ。18Kお買い得!その下には出前寿司。輝く中トロ。宝石屋のチラシに印刷されたルビーよりも艶やかに見える中トロは隣に赤字で書かれた電話番号に掛ければすぐに私の元にやってくる。その中トロをなんかチラシと違うなと思いながら無心で貪る。窓の外からは生暖かい春の風。発情した猫の声。
「この週末は春の嵐となるでしょう。外出される方は雨具を忘れずにお出かけ下さい。」