(続)海の音

雑念のメモ

無題

二十三年前のあの日  何が起こったか理解できなかった  世界の終わりが来たのかなと思った  暗くて寒かった  やがて朝日が差し込んだ  死ななかった  けど死んだ者もいた  割れた水槽の側で名前を知らない誰かに黙祷を捧げた  バスや車が玩具みたいに転がっていた  家は鮮やかな色で燃え尽きて消えた  亡くなった人の分も頑張って生きようとは誰も言わなかった  生き残った者は水と食料と暖を求めることに必死だった  授業の行われていない校庭で大人も子どもも水を求めて列をなす  お笑い倶楽部のMくんがいた  表情はない  何を食べたか覚えていない  押し寄せる灰色の顔をした親戚たち  可哀相な人の仮面  我々家族を嫌っていたはずなのに  厚顔無恥  傲慢 偽善 憎悪  母は泣いていた  父は怒っていた  テレビがついた  みたくなかった  従姉がみたがった  ごっつええ感じを初めてみた  浜ちゃんが笑っていた  あれから死は朝起きてお茶を飲んで眠ることと同じ  悲痛でも悲劇でもなく  あの時死なずに生きることに絶望している者  あの時死んで生きることに絶望することさえない者  世界はまだ終わっていない  世界はまだ