(続)海の音

雑念のメモ

ゴミ袋のアリス

あれは小2の図工の時間だった。まだ図工の先生に教えてもらう前の学年だったからいつもの教室だった。ニシイ先生という担任の先生がいた。家庭から持ってきたゴミ袋や紙袋で班ごとにテーマを決めて衣装を作って完成したらそれぞれ発表しましょう、という授業だった。自分の班が何のテーマだったか忘れたが私は意気揚々とデパートの紙袋やその他色々でロボットの衣装を作った。今で言うガラピコみたいな。けっこういい感じのが出来たと思った。隣の班も完成したらしくその中のクラスの花形みたいな女の子が青いゴミ袋でできた「不思議の国のアリス」でアリスが着ているようなワンピースを着ていた。紙袋を解体して作ったエプロンもちゃんとついていてパフスリーブ袖で。とにかく上手で可愛かった。明るくて人気のあるその女の子は勝ち誇ったように笑っていた。周囲も先生もすごいすごいと言った。途端に自分のロボットが全く可愛くなくみすぼらしく思えてきて、着ていた紙袋の衣装を全部破り捨てた。そして机に突っ伏して泣いた。先生はどうして私が泣いているのか分からず困惑していた。こんなにすてきにできたのに、と確か言っていた。私だってアリスになりたかった。でもなれなかった。なれるのは道化のロボット。それから何十年経ってもあの時の何に対するか分からない悔しさややるせなさがずっと頭に残っている。あの子は今どうしているだろうか。ゴミ袋でできたワンピースのことを覚えているだろうか。